SE(たぶん)の雑感記

一応SEやっている筆者の思ったことを書き連ねます。会計学もやってたので、両方を生かした記事を書きたいと考えています。 でもテーマが定まってない感がすごい。

『カスタマーサクセス』を読んだ

久々の感想記事です。

honto.jp

正式名称は『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』です。題名では長くなるので省略しました。

読もうと思ったきっかけ

以前の記事にも書いたのですが、Salesforceをやることになりまして。その中でカスタマーサクセスという用語をよく耳にしました。Salesforce自体が顧客の成功を望んでいる、というのは調べて分かったものの、そもそもカスタマーサクセスとはなんなのか、という部分をもっと知りたくて、本書を手に取りました。

顧客の成功って言葉はその通りですが、それだけじゃなくて具体的にどういうものか知りたい気持ちでした。

本書の内容

まず、副題?のサブスクリプション時代という部分ですが、これはいわゆるSaaSビジネスが台頭している現代のような状況を指します。SaaSの台頭によって、消費者や企業(カスタマー)は自ら使いやすいサービスを選択するようになりました。これにより、カスタマーは「顧客がサービスを選ぶ」、「比較的安い金額からサービス利用を開始できる」、「気に入らなければサービスを解約すればいい」という状況になりました。

上記のような環境の中、サービスを提供する企業が生き残るには、サービスを使い続けてもらうことが不可欠となっています。では、何をすれば顧客はサービスを使い続けてくれるのか。その一つの解が「カスタマーサクセス」、すなわち、サービスを通じて顧客を成功に導くことである、と主張しています。

そして、カスタマーサクセスを追う、ということは、新規契約獲得を重視する従来の営業ではなく、明らかに異なる観点が必要となります。組織としてカスタマーサクセスを追うためには、そもそも組織構造や評価指標を見直す必要がある、というのが、本書が主張する内容です。

カスタマーサクセスを成し遂げるために技術者ができること

本のネタバレは防ぎたいので、途中の論理はすっ飛ばします。サービスの機能や改善を行う、というのは当然として、カスタマーサクセスの支援としてピックアップします。

  • 顧客のサービス利用状況を収集し、社内で見えるようにする
  • 機能追加などのアナウンスを行う

また、SaaSサービスは乗り換えが簡単で、とにかく短期間で成功を実感してもらう必要があります。その観点では、機能を絞ってコアな部分だけ切り出す、事前に成功のイメージを掴んでもらうためのデモ版作成などができます。

他にも、メール配信のときにパーソナライズした情報を送れるようにするために行動履歴などを収集できるようにデータ整備し、より個人に特化したパーソナライズされた広告メールなどを配信する基礎とすることもできます。

本書にも

本当に拡張可能な差別化要因は製品だけ

という記述がある通り、製品を作るエンジニアはカスタマーサクセスの文脈でも極めて重要な役割を持ちます。むしろ、カスタマーサクセス部門と協力して、何ができるのか提案したり、何ができるのか一緒に考えたり、専門性をより強く生かすことができると思います。

感想

営業やサービス提供って、思っている以上にデータをもとに動くんだな、という感想です。

元々、売上高至上主義には大いに疑問があったので、どうやって売るかという点だけを述べた本などが嫌いでしたが、本書は全然違います。定期収益を得るということがどういうことか、どうやってその定期収益を維持するのか、維持するだけでなくどうやって拡大していくのかなどを述べ、それをなすためにどうやってデータを収集し判断に活用するのか、非常に細かく述べられています。

購入から顧客との関係は始まる

という言葉が、本書の序盤に出てきます。この考え方に立つと、いかに売るかではなく、いかに顧客にサービスを使ってもらうか、それを用いて成功してもらうかという観点に変わります。私にはこれが衝撃でした。

クラウドはハードウェアの費用削減という側面がありつつ、サービスの提供形態の変化、カスタマーサクセスへの変化ももたらしたと考えると、今さらながらすさまじい変化に身を置いているんだなと実感しました。

おわりに

技術者も読んでみると良いと思います。視野が広がります。私は広がりました。観点の一つとして、知っておくと役に立つ日が来るように思います。