SE(たぶん)の雑感記

一応SEやっている筆者の思ったことを書き連ねます。会計学もやってたので、両方を生かした記事を書きたいと考えています。 でもテーマが定まってない感がすごい。

『ケースで学ぶ管理会計』を読んだ

久々に、本を読んだ感想を書いてみます。

今回の本は、以下の本です。

honto.jp

管理会計の本です。

概要

基本構成としては、大企業で導入されて成果を上げた、管理会計の手法を紹介しています。(JALとかGoogleとか)

当然、管理会計の本なので、「どのように管理会計が役に立ったのか」について書かれています。

しかし、本書で最も良いと思ったのは、ケース紹介ではなく、財務会計と管理会計の対比を明確にしている点だと思いました。

対象レベル

内容自体は、簿記を知らなくても読めると思います。
強いていうなら、経営学ぐらいはかじっておいたほうが…とは思います。

簿記の知識を前提に進めるなら、日商簿記2級を勉強している、ぐらいであれば、理解しやすいと思います。(たぶん)

具体論

あまり詳細に書くと、写経(丸写し)になってしまうので…

財務会計管理会計は、「何が違う」のでしょうか?
また、「何が同じ」なのでしょうか?

一言で言うと、同じ会計ではありますが、「果たすべき目的」が異なります。

財務会計

財務会計は、企業規模によって若干目的が異なります。

大企業に限れば、投資家のための報告という意味が最も大きいです。*1
これは、「財務会計の概念フレームワーク」で謳われた通りです。

また、その目的を果たすために、比較可能性という特性も重視されます。

比較可能性を確保するためには、投資家が投資できるすべての企業を、同じ指標で測定できる必要がある。

…という流れで、大企業にとっての財務会計は、「一定の定められた手法」に則って、手続きが行われる、と言えます。

管理会計

管理会計は、企業規模に関わらず、目的は一つだと思います。

それは、

経営者、従業員等、社内で役立てるための、何らかの目的に沿った会計数値を提供する

ことです。
ほとんどの場合、経営や、企業の何らかの戦略に沿う形で、管理会計は用いられます。

管理会計で測定した数値を、外部に公開することは、まず無いです。
なので、「社内で役立てるため」と言い切って問題ないと思います。

いわゆる、日商簿記でいう「原価計算」でも、管理会計的側面から問題が出ることは多いです。
しかし、勘違いしないでほしいことは、

管理会計は、決まった形が無い

という点です。*2

例えば、財務会計の世界だと、どんなものであっても架空計上は認められません。
しかし、管理会計では、「財務会計では認識されない取引」を計上してしまっても、全く問題ありません。

最たる例は、架空の内部取引です。
本書で出てきた例としては、「社内の会議室を利用したら、利用した時間分だけの費用を、部門に計上する」というものです。

当然、社内の会議室を使ったからといって、財務会計上費用は発生しません。
しかし、この制度は「会議自体を減らす」という目的に沿って定められていたら、どうでしょう?

まさに、「企業の戦略に沿う」形で、管理会計が利用されている。そうは言えないでしょうか?

というようなことが、書いてあります。

私見を含めて

私は、大企業(上場企業)にとっての財務会計は、コストでしかないと考えています。

とにかく、以下の要素が厄介です。

大企業にとっては、このコストは「払うしかない」です。
が、こうまでして構築した体制等が、管理会計の役に立つかと言われると…答えはNoです。

あくまで「財務会計」は「報告」が目的なので…
どれほどコストがかかっていようと、それは「報告」のためのコストで、経営に役立てるためのコストではない、と納得しましょう。

印象に残った内容

「単体では、どうやっても収益を上げられない部門」を、どうやって評価するか、という論点です。
一般的な企業だと、「その部門の費用を、他の全部門に配賦する」と思います。

本書の例では、それとは別の解決方法を出しています。
正直、これは目からウロコでした。

詳細はぜひ本を読んでほしいので、ここでは言いません。
さっきまで言っていた、「管理会計では、財務会計では認識されない取引」を計上してもよい、という部分がヒントになります。

まとめ

財務会計は、ある程度決まったルールに従うことから、本書では「集約、自動化する方向にもっていくべき」と言っています。
また、会計システムは、どんどん自動化の方向に流れると思います。

一方、管理会計は、企業独自で構築すべきものです。
よって、一般的な方式を取らない限り、パッケージソフト等ではほぼ解決できないです。*3

たとえば、全く業種が異なる二社を、同一の指標で測ることに何の意味があるでしょうか。

それぞれの会社で、自分に合った管理会計を探し出し、それを業務と結びつける必要がある、と思います。
ほとんどの業務にITが絡む現状では、管理会計はITと切り離せません。

個人的な意見としては、社内システムを外注したりしていて、容易に修正できない場合…
企業戦略に管理会計(と社内システム)がついていけず、戦略が崩壊しかねない、と思います。

だから、みんな、会計を勉強しよう!!!

おわり

*1:中小企業なら、経営判断、納税等も含む

*2:投資意思決定、損益分岐点分析等、計算方法等はすでに開発されたものが大量にあり、それを愚直に利用する場合は除く

*3:一般的な業種(小売とか)に特化することは可能だだろうが、みんな横並びになってしまう